
公開日 2025年06月30日(月)
更新日 2025年07月01日(火)
【くちぶえエッセイ】梅雨が教えてくれた、
お家での過ごし方
光がやわらかく、
空気には少しだけ重みを感じる朝。
梅雨の季節、窓を開けると
雨音がトントンと
心地よく響いていました。
残念そうにしながら、
「今日はおうちかな」と娘。
静かな朝は、家の輪郭が
くっきりと浮かんで見えます。
外に出られない日は、
家の中を整えるチャンス。
キッチンの引き出しを
全部出して整理していると、
娘と主人はリビングに何やら広げて、
ペタペタと色を塗っています。
白や淡い水色、グレー。
娘曰く、雨の日をイメージして
描いたとのこと。
子どもの想像力には、
いつもハッとさせられます。
娘の寝具をさらっとした
コットンに替えました。
湿気が多い季節、
子どもの敏感な肌に触れるものこそ
心地よくしたくて。
洗いたてのシーツに顔をうずめると、
清潔なにおいとやわらかな
感触が混ざり合って、雨音さえも
眠りを誘うBGMのように思えてきます。
リビングのクッションやブランケットも、
娘の描いた絵に似た淡い色に変えてみました。
グレーに、ほんの少しのブルー。
それだけで空気がふわりと
軽くなったように感じます。
季節の変わり目には、
ちいさな模様替えが効くのです。
扇風機も登場しました。
湿った空気を押し出してくれる、
梅雨の相棒。
マイク代わりにして、
おもしろい声色で叫ぶのは、
いつの時代も同じですね。
楽しそうに笑う顔を見ると、
うれしくなります。
家の中に風があるだけで、
少し前向きになれました。
休日は"おうちキャンプ"。
お気に入りのランタンを灯して、
鉄板を使った料理を並べて、
キャンプのアニメを流して。
それだけで、リビングは別世界。
心だけは遠くへ旅しているようです。
庭では、野菜たちが静かに成長中。
雨に濡れたトマトが、
だいぶ大きくなってきました。
バジルはすっかり青々として、
手をかけずとも元気いっぱい。
自然の営みに、
ただ見守るだけの時間。
恵みの雨、ありがたい存在です。
主人が鹿の角を持ち出して
「ランタンスタンドを作りたい」
と言い出しました。
拾ったまましまい込んでいた角を、
ようやく出番だと笑いながら持ち出してきて。
「これ、外でも家でも使えるな」
なんだか嬉しそうに、
目を輝かせています。
雨の日のインテリアを、
暮らしに馴染ませるには
少しの工夫でいい。
大きく変えなくても、
空気の通り道をつくって、
素材を軽くして、
光のトーンを整えて。
外に出られないことが、
家の可能性を広げてくれるようにも
思えてきました。
そんなふうにして、
自分の暮らしともう一度
向き合っています。
ランタンの灯りに照らされて、
ゆっくりと流れる時間。
雨の音、うちの灯り、
ほどよく暮らしがくるまれている感じ。
旅に出なくても、
家のなかに"好き"を散りばめていくだけで、
こんなにも気持ちが満たされるんだと、
梅雨が教えてくれました。