【 悠々、閑々。】春待つ部屋で、想うこと
遠くの山に、うっすら雪が残っている。
大寒が過ぎたとはいえ
京都は、まだまだ冬の景色。
雪降る街も冬の寒さも大好きなわたしだけど
どんよりとした冬曇の日には、
やっぱり外へ出るのが少し億劫になる。
家の中では、ベランダから避難させた植物たちが
テーブルを占領して春を待っています。
わたしの食事スペースの半分くらいは
すっかり埋まっているけれど...
こうなると分かっていながら
ついつい増やしてしまう、好きなもの。
(ベランダにも、まだたくさんあるんです。笑)
日が差さない憂鬱な日和でも
そこに植物があるだけで、なんだか心まで
ぱっと明るくなるから不思議。
この冬になって、香炉をよく使うようになりました。
実家では、母が毎朝お香を焚くのですが
家の中で過ごすことが多くなったわたしも
お香が毎日の気分転換。
今日は「鳩居堂」さんの梅の香りを。
邪気を吸い取ってくれるというお香は、
部屋の中に春をも感じさせてくれて
ふわっと気持ちが軽くなっていく。
そうだ、今日は使うと決めていたものがある。
朝露のように、透き通った艶やかなガラスを
しばらくうっとりと眺めてしまう。なんて美しいんだろう。
そう、ガラスペンだ。
もともとは、日本の風鈴職人さんが
考案したものと聞いたことがある。
外国から伝わった高価な万年筆よりも
手に入りやすいガラスで、と
明治中期に作られたのが始まりだという。
いまでは逆に、日本から世界中に広まっているなんて
なんだかロマンを感じますよね。
実は、このガラスペン、
大学を卒業してすぐに働いていた雑貨店で
一目見てからずっと憧れていたもの。
字を書く機会が少なくなったいまだからこそ...!
と思い、ついに購入したのだ。
ペン先をインクにつける。
気が早いけれど、春が待ち遠しくて
思わず選んだ色には「雛人形」のイラストが。
(ちなみに、これはフランス製なんですって)
透明なガラスが、すっと桃色に色づいていく。
さて、誰になにを書こう...
ふと、書をたしなんでいた祖母のことを思い出す。
大和撫子らしい彼女の書く字は美しく、
子供ながらに憧れたものです。
とても真面目な人だったから
毎日のように机に向かって、書に勤しんでいた。
小さな頃は、よく祖母の部屋で
習字を教わっていたけれど
友達と遊ぶことのほうが楽しくて、
だんだん書くのをやめてしまったんだっけ。
いまであれば、ぜったいに教えてもらうのになぁと
胸がきゅうっとした気持ちになる。
大人になると、いまとなってはもう遅いが...
と思うことも多くて。
だけど、いまからでも遅くないことも
案外たくさんあるのかもしれない。
部屋には、さっき焚いたお香の
あまくて爽やかな梅の香りが、ほのかに漂っている。
季節は少しずつ、たしかに春へと近づいています。
うん、決めた。
この春からはもっと、大切な人に宛てて
たくさん字を書こう。