【ぼくとコペン】京都の暮らしと夏の憂鬱
「京都って、夏はジメジメしてるし、
もの凄く暑いから、やめといた方がいいよ。」
隣の県に引っ越しが決まったことを伝えて、
知人に開口一番言われたこと。
その時の彼の表情は、見送られる側からしたら
想定外の神妙な面持ちだった。
新天地が決まった僕としては、
快く送り出してくれれば、それでよかったんだけど。
そんな情報を手に、恐る恐る
この地に足を踏み入れてから3年。
目の前に広がっているのは、のどかな自然と
和の文化広がる街並み。
今では、友人から羨ましがられるほどに、
とても魅力的な場所に住んでいると思える。
でもただ、やっぱり京都にある夏の
ジメジメとした暑さにだけは慣れない。
カラッとした暑さとはまた違う、
肌にまとわりついてくるような感覚。
知人にかけられた催眠術のせいなのか。
京都のこの季節は毎年、ちょっとした憂鬱な気持ちに
なってしまう。
この暑さだと、愛車でのドライブも
めっぽう減っている。
古い車なせいで、クーラーの効きだってかなり悪く、
出てくるのは温風ばかり。
少しでも出かけようものなら最後、
帰宅する頃には汗だくなのがお決まり。
ちなみに、京都の暮らしにあるちょっとした憂鬱は
他にもあって、一方通行の多さもなかなかのもの。
中心地なんかは特に多くて、進めどすすめど
目的地に辿り着けない...
気づけば、同じ信号機に何度も出会す始末。
仕方ない、京都市内だったらバスで向かおう
なんて言ってられないのもまた憂鬱。
とにかく、バス停が多い。
バスが苦手で、これまで移動手段としては避けてきた
僕にとって、一度で正解に乗るのは至難の業。
暑さで思考も停止してるから、半ば投げやりでバス停に
待機するけど、大体は、無駄に乗り換えするのが
お決まりになっている。
ただ、憂鬱だらけの季節にも、
それを忘れさせてくれる1日がある。
それは、会社終わりに行く祇園祭り。
ふとしたきっかけで、同僚に案内してもらったのが
始まりだった。
山鉾の下で提灯が連なる幻想的な風景と、
それを見ながら感動したり、飲みながらくだらない話を
しているいつもの景色。
この1日だけは、夏の暑さを少しだけいいものに
感じさせてくれる気がする。
今年の夏も思い残すことなく過ごせた。
とてもいい時間。
涼しい家の中で、優雅に過ごしながら、
思い出の1日を見返そう。
振り返るにはまだまだ早い、真夏の休日。
さて、秋が来るまでどう過ごそうか。