フロアライト「BRASS FLOOR LIGHT」の企画経緯と
コンセプト設計についてお話します。
こんにちは。ヤマモトです。
Re:CENO productから、照明プロダクトの2年ぶりの
新作「BRASS FLOOR LIGHT」をリリースします。
ソファやダイニングなどの家具と比べて、ついつい
後回しになりがちな「照明」ですが、実はインテリア
において「照明計画」はとっても大事です。
素敵なホテルやカフェなどを訪れると、とっても
落ち着きますよね。これは綿密な照明計画によって
演出されているからです。
ただ自宅においては、日本では歴史的経緯も相まって
思いのほか照明について、それほど素敵に工夫されて
いる方が少ないのが現状です。
本日のマガジンでは、まずは日本における照明の歴史
を紐解きながら、その先にある理想的な照明計画に
ついて、分かりやすく解説していきます。
その流れで、新作照明の企画経緯とコンセプト設計
を紐解いていこうと思います。
戦後の日本から続く「明るさ信仰」と、
「白い光」を追い求める照明文化
みなさん、海外旅行の際に、夜出発の飛行機に乗った
ことはありますか?
夜の飛行機で離陸する時に、窓から夜景を見下ろすと
欧米諸国は、オレンジ色の光が多いのに対して、
日本は、白い光が圧倒的に多いのです。
欧米諸国と比較して、日本人は「白い光」を
圧倒的に好んで使っています。
僕も小さい頃は、家は蛍光灯でしたし、今も実家では
母が「明るくないとイヤ!」と言って、リビングには
白くて明るい天井光が、煌々と付いています。
これは、戦後まだ国力の弱かった時代に、将来の電力
消費の伸びを懸念した政府が、蛍光灯を推奨した事に
端を発しています。
蛍光灯は、白熱電球より発光効率がよく、寿命も長く
熱の放射が少ないなど、いいことづくめの特徴から
日本中の家が、あっという間に蛍光灯になったのです。
つまりは、日本の政策と文化として蛍光灯が推奨され、
日本人は蛍光灯が発する「白く、明るい」部屋で過ごす
ことに、小さな頃から自然と慣れ親しんできたのです。
住宅街にあるコンビニなんかも、異常なほどに明るい
ですもんね。
また、青い目を持つ欧米人などは、体質として目が光
に弱く、天気のいい日にはサングラスが必需品なのに
対し、黒い目のアジア人は、そもそも光に対して目が
強いため「白く、明るい」に耐えられたという身体的
特徴も影響しているそうです。
このように、日本は歴史的に「白くて、明るい」照明
を好む文化が根強く残っています。
「暗いところで本を読むと、目が悪くなる」
というのは、医学的に正しくない?
また「白くて、明るい照明」を好むのには、もう一つ
「そうじゃないと、目が悪くなる」というのも、よく
見聞きします。
果たして、本当でしょうか。
調べてみたところ「暗い部屋で本を読むと、目が悪く
なる」というのは、医学的に正しくないそうです。
正しくは「一つの物を、長時間近くで見続けること」
が目に悪いそうで、人の目は近くにある物を見続ける
と毛様体という筋肉が緊張して凝り固まってしまい、
その結果、目の筋力が衰えて視力が低下してしまう
そうです。
そのため「暗いところで読書」をしていると、本が
よく見えないため目を近づけて見てしまいがちで、
「一つの物を長時間近くで見続ける状態」になって
しまうため目が悪くなるのです。
おそらくこれが、暗いところで読書をすると目が悪く
なるという噂の元でしょう。
合っている様で、微妙に間違ってますね。
また、調べていく中で知った事なのですが、逆に
「明るすぎると、目が悪くなる」ということもある
そうです。
明るい時には、目は光の量を取り入れすぎないように
するために「瞳孔」を小さく絞ります。
この「瞳孔」は、副交感神経によって、ピント調節の
筋肉と連動していて、瞳孔を小さくすると、筋肉は近く
を見る時と同じ緊張している状態になってしまいます。
そのため、目の疲れが出やすい状態になるのです。
逆に暗い所では、目は光を取り入れるために「瞳孔」
を開きます。この時、目の中の筋肉が緩むので、目は
疲れにくい状態と言えます。
つまりは「明るすぎても、暗すぎても、目にとっては
良い状態ではなく、適切な明るさが重要」なんですね。
自宅をどこよりも落ち着く場所に。
「STARBUCKS」は、最高のお手本です。
素敵なカフェやレストラン、ホテルなど、とっても
落ち着く空間の共通点は「適度な暗さ」です。
適度に暗い方が、緊張感がほぐれ、心は落ち着きます。
僕も夕食をよく居酒屋さんやレストランで食べますが
煌々と光の強いお店は敬遠してしまいます。
上質なお店ほど「暗さ」を大切にしていて、その方が
とても落ち着いた時間を過ごせるからです。
例えば、分かりやすいのが「STARBUCKS」です。
みなさんも行ったことのある人が多いと思いますが、
美味しいコーヒーを楽しむだけでなく、落ち着いて
読書したり、勉強したりするのに最適ですよね。
適度な照明の暗さによって、落ち着いた空間が演出
されていて、自宅などで本を読んだり、勉強をしたり
するよりも、なぜか捗るから不思議です。
自宅の照明計画を考える時には、STARBUCKSの様な
雰囲気のあるお店に夜に行ってみて、どのくらいの
明るさが好みかを知るのが有効です。
個人的には、上質なホテルに泊まるのが一番のおすすめ
ですが、STARBUCKSなら手軽に行ける方が多いと
思いますので、ぜひお気に入りの本を一冊持って、
足を運んでみてはいかがでしょうか?
最適な「照明計画」のイメージがぐんと沸きやすく
なると思います。
落ち着くお部屋を実現する照明の基本は3つ。
「必要な明るさ」と「多灯」と「色味を合わせる」
さて、ここまでは「白くて、明るい」を求めてしまう
理由と誤解、そして「落ち着くための明るさ」の重要
性を紐解いてきました。
そして、ここからは「自宅を落ち着く場所」にする為
の「素敵な照明計画の基本」を3つご紹介していこうと
思います。
<照明計画の基本.1>
必要な明るさは、1畳あたり「15~20W」が基本
お部屋の広さ | 8畳 | 15畳 | 25畳 |
---|---|---|---|
必要な明るさ | 120~160W | 225~300W | 375~500W |
まず、自宅のお部屋のサイズから、最適な明るさを
知るところからはじめましょう。
最適な明るさは「1畳あたり15~20W(ワット)」です。
これを頭に入れておきましょう。
8畳であれば、120~160W。
20畳であれば、300~400Wです。
これが基本となります。
明るさの単位について...
明るさの単位は正しくはルーメン(lm)で表しますが、ワット(W)で表した方が理解しやすいためそちらにて解説しています。LED電球を購入の際にも、たいていは外箱にルーメンとワットの両方が記載されています。
照明計画として参考例を挙げると、
▽8畳ワンルーム = 120~160W
----------------------------------------------------
・天井:100W
・フロアライト:60W
----------------------------------------------------
合計:160W
▽25畳LDK = 375W~500W
----------------------------------------------------
・リビング天井:60W
・ダイニング天井:60W×3=180W
・リビング フロアライト:60W
・テーブルランプ:60W
・ダイニング フロアライト:60W
----------------------------------------------------
合計:420W
といった感じです。
ちなみに、いろんなサイトでは「1畳あたり30~40W」
などと書いてあることが多いのですが、これはかなり
明るいです。
僕たちもスタッフみんなでいろいろと検証してみたの
ですが、1畳あたり15~20Wあれば、本を読めるくらい
の明るさを確保できますし、目が疲れない程度の上質
な明るさ/暗さを実現できます。
だから、自信をもって「1畳あたり15~20W」を
おすすめします。
<照明計画の基本.2>
天井+フロア+テーブルをセットで考える。
初心者がやりがちな過ちは、天井照明1つだけで、
お部屋の明るさをまかなってしまうやり方です。
これだけは絶対にやめてください。
光というのは「陰影」がとても大事で、ぼんやりと
照明のまわりが明るく、逆に照明から離れたところは
暗くなっている。
お部屋に「明るいところ、暗いところがあることで、
美しい陰影とリズムが生まれる」のです。
「強く明るい天井の光」だけで明るさをまかなって
しまうと、部屋全体がのっぺりとした印象になり、
美しくありません。
お部屋の照明を考える時には、
「天井+フロア」
「天井+テーブル」
「天井+フロア+テーブル」
など、複数の灯りを、お部屋に取り入れましょう。
お部屋に豊かな表情が生まれます。
重要なのは「灯りの足し算」です。
2つ以上の灯りを組み合わせて、1畳あたり15~20Wに
なるように、足し算していきましょう。
<照明計画の基本.3>
部屋の中にある「光の色味」を揃える。
そして、最後の3つ目です。
電球の色合いを揃えてください。
ずばりは「電球色(オレンジ色)」で揃えましょう。
たまに「昼白色(白色)」と「電球色(オレンジ色)」
がLDKで混ざったお家などを見かけます。
それは、こんな風に色合いが混ざってしまうので、
とっても残念になってしまいます。
下の画像の様に、つながりあうお部屋の場合は、
必ず電球の色合いは揃えるようにしましょう。
また、とはいえ、
「ダイニングで勉強するから、白い光にしたい」
「キッチンは白くないといやだ」
なんて声もあると思います。
そんな方にお勧めしたいのが「スマート電球」です。
明るさを調整できて、色味も調整できるので、
TPOに応じて、自由自在にスマホで変更できるので、
とっても便利です。
なかなか馴染みのない方が多いのですが、個人的には
これがないと生活しようがないくらいに便利ですので
めちゃくちゃお勧めです。
最もポピュラーなのは「Phillip hue」です。
Amazonや家電量販店などで購入でき、スマホさえ
あればすぐに導入できますので、お勧めです。
※現在リセノでは、マルチカラー対応「Tapo L530E」
というスマートLEDを取り扱い中です。
「ロジェ・ファテュス」をオマージュ。
上質な3つ脚の真鍮スタンドライトを作りました。
さて、ここまで延々と照明の歴史と理想的な照明計画
について書いてきました。
ここからようやく新発売の照明について書いていきます。
今回の照明は、真鍮のスタンドに、二重のシェードを
付けたスタンドライトです。
この真鍮のスタンドライトは、フランス人デザイナー
「ロジェ・ファテュス」が1950~60年代に手掛けた
フロアライト<6110>をオマージュしています。
<6110>は美しい真鍮の3つ脚が特徴的なスタンド照明
で、スッと縦に伸びた姿がとても美しい照明です。
日本でも真鍮のスタンドライトは割と見かけますが、
大抵は円形の台座が付いたものばかりです。
今回は、国内の照明工場に相談し、3つ脚のスタンド
を真鍮を溶接することで、オリジナルで実現してもら
いました。
真鍮の溶接が高額なこともあり、お値段はすこし高く
なってしまったのですが、<6110>は市場に出回って
いないため、入手が困難であることと、円形に比べて
3つ脚はスタイリッシュで美しいと個人的に思います
ので、思いきって作ってみました。
真鍮を贅沢に使っていることで、経年変化も楽しめ
ますので、ソファ横などを定位置として、長く使って
もらって、時間の経過とともに、深い趣きのある照明
に育ててもらえればと思います。
二重シェードで、幻想的な光を表現しました。
そして、<6110>とは異なる点として、シェードにも
こだわりました。
薄いシェードを二重にすることで、中で光る電球の光
を柔らかに拡散し、また、シェードの重なりが美しく
浮かび上がります。
電気を点けている時に美しいのはもちろんのこと、
消えているときにも、美しいフォルムが出るように
デザインしました。
シェードは、コットン100%の薄く編んだファブリック
を採用しています。
シェードを二重にするにあたって、どのくらいの薄さ
のシェードがもっとも美しく透過するかを、あれこれ
と検証しました。
その結果、極限まで薄いファブリックを使用すること
で、2つのシェードの陰影が美しく表現され、また、
おだやかな光を放つことが分かりました。
独特なおだやかな光が、自宅を落ち着いた光で包んで
くれることでしょう。
美しい光を、メイン照明に。
「ペンダントライト」もつくりました。
美しいシェードが出来ましたので、ペンダントライト
用も作りました。
下部分にカバーを付けることで、ダイニングで使う時
に電球が直接目に入らず、より快適に過ごせるような
工夫もしています。
こだわりを詰め込んだ「BRASS FLOOR LIGHT」
2021年4月2日より予約発売を開始します。
というわけで、日本における照明の歴史を紐解き、
その先にある理想的な照明計画と、その流れで、新作
照明の企画経緯とコンセプト設計を紐解きました。
落ち着きのある照明計画は、仕事や学校、家事終わり
にほっと一息つきたい夜を、ぐっと快適なものに
変えてくれます。
ぜひSTARBUCKSをはじめとして、素敵な照明のある
空間を体感していただき、それから、ご自宅の照明に
ついて改めて見直してもらうきっかけになれば嬉しい
なと思います。
さて、新発売のスタンドライトですが、4月2日に
オンラインにて予約販売を開始しまして、東京店・
京都店の展示も含めて、お届けできるのは、5月下旬
を予定しています。
ちなみに、東京店・京都店の両店舗につきましても、
一般のインテリアショップよりも、かなり明るさを
抑えた営業をしております。
そちらも参考にしてもらえれば幸いです。
Re:CENO product|BRASS FLOOR LIGHT
Re:CENO product|LAYERED PENDANT LIGHT
追記:
本ブログの内容は、以下の書籍を参考にさせていただ
きました。2005年に出版された本ですが、その内容は
とても分かりやすく、私自身、照明の大切さに気づく
きっかけになった本です。
ご興味のある方はぜひ手に取ってみてください。
光の家具 照明