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天井照明「SHIF CEILING LIGHT」の企画経緯と
コンセプト設計についてお話します。

こんにちは。ヤマモトです。

Re:CENO productから、初となるシーリングライト
をリリースします。

シーリングライト(天井付け照明)は、天井と一体化
する様なフラットタイプが一般的です。

フラットなシーリングライトは、よく言えばシンプル
ですが、悪くいえば、実にそっけなく、インテリア性
の低いものです。

今回の製品は、ボール型シェードを採用し、天井家具
を覆うように紙布(しふ)で作ったソケットカバーを
配して、意匠デザインを高めることを目指しました。

ダイニングからリビングを見たときにも、可愛らしさ
を感じられるシーリングライトに仕上がりました。

そして、日本の住宅事情から発生する「不」について
解消する工夫を入れ込んだ製品でもあります。

本日のマガジンでは、この新作シーリングライトの企画
経緯とコンセプト設計を紐解いていこうと思います。

リビングには、シーリングライトを。
ダイニングには、ペンダントライトを。

20220127-01.jpg

天井照明には、シーリングライトと、ペンダントライト
の2種類あるのをご存じでしょうか。

シーリングライトとは、天井に張り付くように設置
する照明のことです。

英語で「天井 = シーリング」ですので、そのままの
意味ですね。

代表的なシーリングライトは「フラットタイプ」が
圧倒的に多く、このタイプがリビングに付いている
ご自宅も多いのではないでしょうか。

20220127-09.jpg

ちなみに、僕の実家も、母の「明るくないとイヤ」と
いう一存で、昔から、これ一択です。

そのほかのタイプとしては、リセノでも取り扱いの
ある「スポットライトタイプ」や、

20220118-13.jpg

「ボールタイプ」などがあります。

20220118-14.jpg

どのシーリングライトも、見てわかるとおり、基本的
に天井に近い位置にくるように設計されています。

リビングの照明の下は、人が歩く導線と一緒になって
いるため、ペンダントライトだと、頭をぶつけてしま
うため、ぶつけないように天井に近い位置に照明を
付けるという理由からです。

20220127-04.jpg

一方、ダイニングには、ペンダントライトを付けます。

「ペンダント = ぶら下がっている」が語源で、コード
などで目線の高さくらいまで吊り下げられているのが
「ペンダントライト」です。

20220127-39.jpg

ペンダントライトは、ダイニングテーブルの真上に
吊るしますので、歩く導線とは切り離されています。

つまりは、頭をぶつける心配がないので、ダイニング
には、ペンダントを吊るすことができます。

20220127-41.jpg

このような理由から、

リビングには、シーリングライトを。
ダイニングには、ペンダントライトを。

というのが、天井照明の基本です。

こちらの動画でも、詳しく解説しています。

【動画】センスのいらないインテリア|リビングにはシーリングを。ダイニングにはペンダントを。

「ペンダントライト」に比べて、
選択肢が少ない「シーリングライト」

20220127-42.jpg

さて、シーリングライトとペンダントライトの見た目
と、設置場所の違いをご理解いただけたと思います。

それぞれのライトは、設置される高さゆえに

  • シーリングライト = 天井に近く、あまり目にしない = 種類やデザインが少ない
  • ペンダントライト = 目線にあるため、よく目にする = 種類やデザインが豊富

という現状があります。

北欧の著名な照明ブランドである「ルイスポールセン」
や「フリッツ・ハンセン」「アルテック」「マジス」
なども、揃ってシーリングライトを取り扱っていません。

20220118-6.jpg

これには、さまざまな理由が考えられますが、僕の
見解では、天井からの灯りよりも、フロアやテーブル
の灯りを優先する文化の違いや、天井高に起因する
住宅事情の違いが大きいのかなと思います。

日本は、格別に天井からの灯りを重視する文化です。

このあたりの歴史は、こちらのマガジンでも紐解いています。

「BRASS FLOOR LIGHT」の企画経緯とコンセプト設計についてお話します。

ここから分かるのは「日本と異なり、照明に長けた
文化をもつ北欧の照明ブランド」でさえ、シーリング
ライトはデザインしておらず、選択肢が非常に少ない
という事実です。

必然的に「シーリングライト」に不朽の名作はなく、
暮らしで目にすることも限定的なので、ペンダント
ライトに比べて、インテリアの中でおざなりにされが
ちなのです。

せっかく家具やインテリアにこだわってお部屋作りを
楽しんでいるのに、リビングの照明がイマイチ気に
入るものがないのって、悲しいんですよね。

僕自身も、割とシーリングライト迷子だったりします。

シーリングライトのデザインを考えるうえで、
実はもう1点、大きな問題が隠れています。

20220127-07.jpg

また、シーリングライトのデザインを考えるうえで、
実はもう1点、大きな問題が隠れています。

それは「天井器具」の問題です。

照明を付ける「天井器具」には、複数のタイプがあります。

20220127-62.jpg

どの天井器具であっても、照明側についているプラグ
を天井器具に「カチッ」と付けることで通電します
ので、基本的な機能はどれも一緒です。

20220127-51.jpg

天井器具にさまざまな形状があるのは、おそらく専用
規格がなく、住設メーカーがそれぞれに作ってきた
からだと推測できます。

耐荷重を高めるために、フック(耳のような部分)が
付いている「ローゼットタイプ」があったり、最も
簡易な仕様の「角型引掛シーリング」があったりと、
住宅によって、様々です。

天井家具のそれぞれのタイプを見ていただくと分かる
とおり「直径と高さ」が、それぞれ異なります。

20220127-61.jpg

また、上記の5タイプは代表的なものですが、例えば
「丸形引掛シーリング」でも、古いものと、最新の
ものでは、微妙に直系や高さが違っていたりします。

そして、この「色々ある」のが、シーリングライトの
デザイン設計において、とてもやっかいなのです。

様々なサイズの天井器具に対してシーリングライトを
付ける時に、どの器具でもすべて覆い隠すような
「フラットタイプ」のデザインなら良いのですが、

20220127-37.jpg

ボール型ライトのように、ソケットカバーにデザイン
性を持たせるにあたって、このバラバラした天井器具
がアダとなり、なかなか製品化しづらく、こんな風に
ソケットカバーが足りなかったり、

20220127-43.jpg

フックを隠し切れなかったり、そもそも付けること
さえ出来なかったりもします。

20220127-58.jpg

ちなみに、さきほどから例に使っているリセノの販売
製品含めて、世の中に販売されているボールタイプの
シーリングライトは「ローゼットタイプ」に対応して
いるものはありません。

説明書には、こんな風な注意書きがあります。

20220127-44.jpg

フックが飛び出しているために、ソケットカバー部分
がはまらないのと、埋め込みタイプは、器具の高さが
低すぎて、こちらもソケットカバーが入らないからです。

仮にフック付きの天井器具に対応するには、こんな風
にソケットカバーを太くしないといけませんので、
デザインが崩れてしまいます。
(画像を合成して作っています。)

20220118-5.jpg

また、デザインが崩れるだけならまだ良いのですが、
「引掛埋込ローゼット」の薄い形状のものに取り付け
るためには、ソケットカバーを最初から低く設計して
おかないと、そもそも取り付けられません。

20220118-4.jpg

逆にソケットカバーを低いものを標準とすると、その
他の天井器具の場合には、天井との間に隙間ができて
しまいます。

これらの理由で「取り付けできませんよ。注意して
くださいね。」としているわけです。

それぞれの天井器具に合うように、いくつもタイプを
作ることもできるといえばできますが、価格が跳ね上
がってしまうのと、購入した方が引っ越しをする時に
次の住宅では、天井器具のタイプが違う場合に結局
使えなくなってしまうという問題も発生します。

20220127-46.jpg

このボール型ライトは、国内メーカーの製品ですが、
デザイナーさんが苦渋の決断で、ローゼットを不可に
することで、なんとか製品化に至ったのではないかな
と、勝手に想像しています。

個人的に、自宅でも採用するほど気に入っているの
ですが、天井器具が合わないために、賃貸ながら業者
さんに工事をしてもらって、付けています。

ボールタイプのシーリングライトは、フラットタイプ
に比べて、デザイン的に可愛らしく、控えめながらも
リビングの照明として素敵だと思います。

20220127-13.jpg

20220127-14.jpg

まとめますと、さまざまなタイプの天井器具に合う様
にするためには、ボールタイプは形状デザインだと
とても難しく、引っ越しまで視野に入れると、購入に
躊躇してしまいます。

なので、

「なんとかボールタイプをリビングに入れられる様に
 したい。しかも、いろんな天井器具で使える様な
 仕様で作りたい。」

こう考えたのが、オリジナルのシーリングライトを
作ろうと思ったきっかけです。

ボール型を、様々な天井器具にフィットさせたい。
コンセプト設計は、決まりました。

20220127-06.jpg

さて、求めるシーリングライトの要件が、固まってきました。

まとめると、

  1. すべての天井器具にフィットしなくてはいけない
  2. シーリングライトとして、デザインの良いものを

といった感じです。

それぞれに工夫を凝らしましたので、順を追って
紐解いていきたいと思います。

様々な天井器具に、対応を。
高さが可変する「専用ソケット」を作りました。

20220127-19.jpg

さて、シーリングライトとして、ボール型が素敵だと
いう方向性は、決まりました。

ただし、それを実現するためには、最大の難関である
「天井器具の形状に合わせて、ソケットカバーの
 サイズがさまざま必要」の解決です。

おさらいすると、

自宅で使っているこちらのボール型シーリングライト
を、すべての天井器具に対応させるための問題は2つ。

20220118-10.jpg

1つ目は、真鍮部分がスリムなので、フック(耳)付き
ローゼットの場合、フックがはみ出してしまうという
「直径」の問題。

2つ目は、真鍮部分の高さが固定なので、天井器具の
高さが変わった場合に、天井と真鍮の間に、隙間
が出来てしまうという「高さ」の問題。

この2つです。

「高さ」と「直径」の2つの問題をクリアした点に
ついて、ひとつずつ紐解いていきます。

それにしても、毎度、解説が長くなってしまって、
すみません。

問題1:直径問題の解決

20220127-58.jpg

直径に関しての問題は、複雑ではありません。

フック(耳)のついた天井器具が最大直径ですので、
ソケットカバーの直径を、それ以上にしておけばOKです。

ただ、そのまま太くしてしまうと、かなりぼってりと
した印象になってしまいます。

20220118-5.jpg

そのため、デザインとして「くびれ」を付けることで
スリムな印象を与えました。

20220127-16.jpg

これにより、スタイリッシュな印象を保ちながらも、
フック(耳)の付いている天井器具にも、対応できる
ようになりました。

20220127-52.jpg

20220127-10.jpg

問題2:高さ問題の解決

20220127-43.jpg

さて、最難関の「高さ」の問題です。

通常の天井器具は、数ミリ単位で高さがバラバラ。
埋込ローゼットにいたっては、数センチ単位で、
高さが異なります。

天井器具自体の高さが、物件によって変わるので、
低いソケットカバーじゃないと設置自体ができなか
ったり、逆に低いソケットカバーを標準にすると、
天井との間に隙間ができてしまったりします。

これらの高さの異なる天井器具に対応できるような
工夫をしなくてはいけません。

これには、照明メーカーさんとともに、何度も試作を
重ね、解決策を見出すのに、非常に時間がかかりました。

期間にして、約1年半。
試作バージョンは、10回を超えました。

長い期間をかけて、見出した結論は「ソケット部分に
可変の仕組みを取り入れる」という方法でした。

20220127-59.jpg

この「高さ可変ソケット」を作ったことで、天井器具
の高さが異なる問題にも対応が可能になりました。

20220127-60.jpg

天井器具の高さがあるときには、こんな風にソケット
の位置を低めに設定すれば、ぴったりと天井に付きます。

20220127-23.jpg

天井器具の高さが低い時には、こんな風にソケットの
位置を高めに設定すれば、ぴったりと天井に付きます。

20220127-24.jpg

また、古い物件で使われている旧タイプの天井器具の
場合は「数ミリ単位の高さが新しい天井器具と異なる」
という問題が発生します。

これにも頭を悩ませましたが、最終的には、専用の
「ゴム製スペーサー」なるものを作りました。

20220127-32.jpg

1mmタイプと、5mmタイプの2種類です。

この「ゴム製スペーサー」と「高さ可変ソケット」を
組み合わせて使うことによって、どんな高さの天井器具
にでも、フィットするようになったのです。

20220127-40.jpg

出来てしまえば、なんてことのない仕組みなのですが、
この答えにたどり着くまでに苦労しました。

照明メーカーさんもよく付き合っていただけたと
感謝しかありません。

ただ、この開発を行ったおかげで、いままでに無かった
「さまざまな天井器具にフィットするボール型照明」
を実現することができたのです。

「紙布(しふ)」を使ったデザインで、
シーリングライトに味わいを。

20220127-17.jpg

さて、最後に意匠性を高めたポイントです。

今回、シーリングライトのソケットカバーには
「紙布(しふ)」という素材を採用しました。

紙布とは、機械抄きの和紙に、水分をなじませ、
薄くねじり、撚(よ)ったものです。

20220127-49.jpg

国内の専門工場にて作られる紙布(しふ)は、伝統的
な素材である和紙の風合いはそのままに、独自の技術
を加える事で、まるでラタンや網代のような自然素材
の風合いを表現しています。

この紙布(しふ)を、ソケットカバーになるように
整形し、裏紙を選定しました。

20220127-30.jpg

これにより、電気を消しているときには「工芸品」の
ような味わいのあるソケットカバーとなり、また、
灯りをつけているときには、紙布(しふ)の網目から
光がこぼれるように光るようにデザインしました。

20220127-36.jpg

リセノが提唱している「ナチュラルヴィンテージ」の
スタイリングには「ディテールアイテム」と総称する
味わいのあるアイテムを、インテリア内に散りばめる
という手法があります。

22.jpg

真鍮のソケットカバーも素敵なのですが、今回は、
さらに味わいを高めるために、よりディテール感の
強い素材を配することで、味わいのある照明に仕上
げることにしました。

白い天井に、ディテール感を感じる素材があるだけで
ダイニングから見たときの、美しさがあります。

20220127-20.jpg

普段は意識してみない場所ではありますが、そこに
まで気を配っているところが、素敵かなと思っています。

「ナチュラルヴィンテージ」スタイリングのメリットと、実践ポイントを紐解きます。

職人の手で作る「手吹きガラス」により、
軽量なガラスシェードを作りました。

20220118-11.jpg

また、ガラスのシェード部分も専用に開発し、軽量化
を図るために「機械式」ではなく、職人の手による
「マウスブロー」方式で、1つずつ成型しています。

通常の機械吹きで生成すると、全体的に均一な厚みの
ガラスシェードができるのですが、今回は厚みのある
部分と、薄い部分を作ることで、全体的に強度と軽さ
を両方実現しています。

とにかく手間のかかって出来上がった製品です。

こだわりを詰め込んだ「SHIF CEILING LIGHT」
2022年2月7日より予約発売を開始します。

20220127-50.jpg

というわけで、新作照明の企画経緯とコンセプト設計
を紐解きました。

かなりややこしい裏側の設計のお話になりましたので
どこまで書こうか悩みましたが、細やかな設計思想を
お伝えした方が、逆に分かりやすいかなと思って、
しっかりめに書いてみました。

このシーリングライトによって、リビングが柔らかな
光で照らされて、よりリラックスできる空間になる
ことを願っています。

ちなみに、この考えの根本として、リセノでは、
多灯照明でお部屋を照らすことを推奨しています。

暮らしにあった照明の選び方

落ち着きのある照明計画は、仕事や学校、家事終わり
にほっと一息つきたい夜を、ぐっと快適なものに
変えてくれます。

ぜひとも、自宅を素敵なバーような、週末のキャンプ
のような、ゆったりとリラックスできる空間にする為
のアイテムとして取り入れてもらえればと思います。

Re:CENO product|SHIF CEILING LIGHT

20220127-48.jpg

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